暑くなってくると熱中症のリスクから、冷たい飲み物や食事をたくさんとったり、冷房のきいた部屋に一日中いたり…。
知らないうちに体を冷やしすぎてはいませんか?
体を冷やしすぎると、
少しでも「該当する」と感じた人は、ぜひ今から冷え対策をしましょう。
今回は冷えを改善してくれる栄養素を中心に解説していきます。
食事は内臓に直結するため、以下の栄養素を食事に取り入れることで、内臓の冷えが少しずつ改善していきます。
冷えを改善してくれる栄養素と効果的なとりかた
冷え性や血行不良に効果的な栄養素は、主に
「ビタミンE、マグネシウム、鉄、タンパク質、カプサイシン」などがあります。
今回はこの5つの栄養素について、主な働きや効果的なとりかたなどを解説していきます。
ビタミンE
ビタミンEの主な働きは、
冷えの原因は「血行不良」によるもの。
内臓は血管に囲まれているため、血流を良くすることにより、内臓の働きも良くなります。
また、気温差のストレスで乱れてしまった自律神経の働きを取り戻し、不眠の改善やイライラの緩和に役立ちます。
さらに、ビタミンEは高い抗酸化力をもち、紫外線によるストレスで増えてしまった活性酸素(老化を促す物質)を減らしてくれる効果もあります。
摂取上の注意
ビタミンEはとりすぎると過剰症を引き起こす可能性があるため、サプリメントなどによる過度な摂取には注意が必要です。
1日の摂取上限量(以下参照)を守り、必要以上の摂取は避けましょう。
※日本人の食事摂取基準(2020 年版) – 厚生労働省 参照
ビタミンEを多く含む食材
- 野菜類…西洋かぼちゃ、アボカド、モロヘイヤ、ほうれん草
- 魚介類…うなぎ、たらこ、鮭
- その他…アーモンドなどのナッツ類、植物油
効果的なとりかた
ビタミンEは脂質に溶けやすい性質があるため、主に体の細胞膜で抗酸化作用を行います。
ビタミンCにも抗酸化作用がありますが、ビタミンCは水溶性のため血液など体液中でその効果を発揮します。
それぞれが体内の別の場所で働くことにより、単体でとるよりも効率よく働いてくれます。
さらに、ビタミンCには疲れてしまったビタミンEを復活させてくれる効果もあるため、一緒に取ることでビタミンEを有効活用することができます。
ビタミンCはほとんどの生野菜や果物に含まれています。
ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いため、できれば生食でとるのが理想的ですが、生ばかりだと内臓が冷えてしまうため、オリーブオイルでソテーした焼き野菜などを上手く利用しましょう。
水に溶けやすい性質を利用して野菜スープを作れば、スープに溶け出したビタミンCを摂取できるだけでなく、内臓も温まるのでおすすめです。
マグネシウム
マグネシウムの主な働きは、
タンパク質や脂質、糖質などからエネルギーを取り出し、体の熱を作り出すために必要なのが「酵素」です。
特にマグネシウムは糖質を代謝する酵素の働きをサポートし、エネルギー産生に深く関わっています。
熱が作られることにより自然と体温も上がり、冷え予防につながります。
内臓の冷えにより便秘を引き起こしている場合は、マグネシウムの効果によって便秘の改善が期待できます。
摂取上の注意
とりすぎによる過剰症は起こりにくいものの、腎機能が低下している場合やサプリメントなどで一度に大量摂取した場合、吐き気や下痢を起こすことがあるため注意が必要です。
1日の推奨量(以下参照)を目標に、過度な摂取は控えましょう。
※通常の食事以外からの摂取の場合、成人で350mgが上限となります。
※日本人の食事摂取基準(2020 年版) – 厚生労働省 参照
マグネシウムを多く含む食材
- 野菜類…ほうれん草などの葉物、枝豆、切り干し大根、とうもろこし
- 海藻類…あおさ、わかめ、昆布、ひじき
- 魚介類…サバなどの青魚、あさり、しらす、金目鯛
- その他…バナナ、イチジク、落花生などのナッツ類、きな粉、玄米、雑穀
効果的なとりかた
マグネシウムは主に腸管で吸収されますが、ビタミンDにはその吸収を促進する働きがあります。
ビタミンDを一緒にとることで、マグネシウムの吸収率をアップさせることができます。
ビタミンDを多く含む食材…
干し椎茸、きくらげ、イワシ・ブリなど青魚、鮭、卵黄 など
普段のお味噌汁にわかめを足すだけで、マグネシウムを手軽に摂取できます。
面倒でなければ干し椎茸で出汁をとり、とった後の椎茸も具として一緒に食べることでビタミンDを多く摂取できます。
マグネシウムの豊富なきな粉を様々な飲み物にプラスするのもおすすめです。
牛乳に溶かすだけでなく、カフェラテやココアに入れても香ばしさやコクが増して、美味しさもアップします。
焼き魚を中心とした和定食はまさにマグネシウムの宝庫。
塩分のとりすぎさえ注意できれば、多くのマグネシウムを摂取できます。
鉄(鉄分)
鉄の主な働きは、
鉄が作り出すヘモグロビンは、呼吸で取り込んだ酸素と結びつき、体内の隅々まで酸素を運びます。
そのため、鉄の摂取が不足すると、酸素の供給が上手くできずに血行が悪くなってしまい、冷えの原因にもなります。
女性に多い貧血の症状も鉄不足によるものがほとんどです。
摂取上の注意
日本人は平均して不足傾向にあるため、とりすぎを意識する必要はありませんが、サプリメントや鉄剤の飲み過ぎで過剰に摂取してしまうと、過酸化脂質の蓄積などを引き起こす場合もあるため、注意が必要です。
1日の上限量(以下参照)を超えない範囲で過度な摂取は控えましょう。
※日本人の食事摂取基準(2020 年版) – 厚生労働省 参照
鉄を多く含む食材
- 野菜類…ほうれん草、小松菜、枝豆
- 魚介類…しじみ・カキなどの貝類、カツオ・マグロなど赤身魚、イワシ
- 肉類…鶏・豚・牛レバー、ヒレなど赤身肉
- その他…卵、豆腐・納豆など大豆製品、ひじき・海苔などの海藻類
効果的なとりかた
ビタミンCやクエン酸、乳糖は、鉄と一緒にとることで鉄の吸収を助ける働きがあります。
ビタミンCは生の野菜・果物に多く、クエン酸は梅干し・レモンなどの柑橘類、乳糖は牛乳・ヨーグルトなどの乳製品に多く含まれます。
鉄は大きく「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」に分けられます。
ヘム鉄は肉や魚・卵などの動物性食材に多く、非ヘム鉄は野菜や穀類・豆類などの植物性食材に多く含まれています。
この2つは体内での吸収率に大きな差があり、非ヘム鉄は2〜5%なのに対し、ヘム鉄は15〜25%と効率よく体に吸収されることがわかっています。
植物性食材だけからの摂取に偏らず、動物性食材も積極的に食べるようにしましょう。
鉄の吸収を促進する栄養素だけでなく、タンニンのように吸収を阻害する成分もあります。
タンニンはコーヒー・紅茶・緑茶などに含まれるため、食事中や食後すぐに飲むのは控え、2〜3時間ほど間隔を開けてから飲むようにしましょう。
赤身の肉や魚と野菜を組み合わせることにより、鉄とビタミンCが一緒に摂取できます。
夏野菜は水分が多く、生で食べると体を冷やす効果が高いため、冷え対策としては加熱して食べるのがおすすめです。
鉄を摂取する目的で、特に優秀な食材は「レバー」です。
月に数回、意識して食事に取り入れるだけでも多くの鉄が摂取できます。
「レバニラ炒め」は、レバーと野菜を一緒に食べることができるため、鉄を摂取するのに最適な料理です。
タンパク質
タンパク質の主な働きは、
人間が生きていく上で重要となる三大栄養素の一つが、この「タンパク質」です。
(残りの2つは「糖質」と「脂質」です。)
それだけ多くの役割を担い、体を作る上で欠かすことのできない栄養素になります。
体の内側も外側もほぼ全てタンパク質でできているため、不足すると体への影響が大きくなります。
タンパク質は体内で分解される際、酵素によってエネルギー(熱)が取り出されます。
その熱により体温が上がり、冷えの改善へとつながります。
ダイエットをしたことにより、体が冷えやすくなった人はこの「タンパク質不足」も一つの原因だと考えられます。
摂取上の注意
食生活が豊かになった現代でも日本人のタンパク質摂取量は不足気味だとされています。
そんな中、最近では「プロテイン食品」の普及により、手軽に美味しくタンパク質が摂取できるようになりました。
不足傾向ではあるものの、とりすぎると肝臓に負担をかけてしまう場合もあるため、1日の推奨量(以下参照)を目標とし、とりすぎには注意しましょう。
※日本人の食事摂取基準(2020 年版) – 厚生労働省 参照
タンパク質を多く含む食材
- 肉類…鶏のささみ、鶏むね肉、豚のヒレ・ロース・モモ肉、牛のモモ肉
- 魚介類…カツオやマグロなどの赤身魚、サバやブリなど青魚、鮭、ツナ缶
- 豆類…豆腐、納豆、おから
- その他…卵、チーズなどの乳製品、お麩やパンなど小麦製品
効果的なとりかた
タンパク質のみで摂取した場合、エネルギーを作り出すときにアミノ酸も利用されてしまうため、アミノ酸を必要とする組織に供給されるアミノ酸の量が減ってしまいます。
それを防ぐためにも、タンパク質と一緒に適量の糖質をとることで、タンパク質の前に糖質がエネルギー源として使われ、アミノ酸消費の節約になります。
糖質には様々な種類がありますが、できれば砂糖やお菓子など甘さを感じる食品ではなく、ご飯やパンなど主食からとるのがおすすめです。
私のレシピでも鶏むね肉やツナ缶を使ったものを多数ご紹介していますが、安価なうえ使い勝手のよい食材なので、定期的に食生活に取り入れることで、手軽にタンパク質が摂取できます。
肉や魚はタンパク質の宝庫ですが、食材によっても少しずつアミノ酸の種類が違うため、できれば卵や豆類、乳製品などを含め、バランスよく様々な食材を食べるように心がけましょう。
カプサイシン
カプサイシンの主な働きは、
トウガラシに含まれる辛味成分がこのカプサイシンです。
血行を促進して新陳代謝を上げることにより、体の中から冷えを改善していきます。
発汗作用もありますが、かいた汗を拭かずにそのままにしておくと、逆に体が冷えてしまうため、汗をかいたらすぐに拭き取るようにしましょう。
夏の冷えで食欲不振になり、食事量が減ってしまうと、さらに冷えを悪化させてしまいます。
カプサイシンはその疲れた胃を刺激して、胃液の分泌を高めてくれるため、食欲を増進させ消化を助けてくれます。
摂取上の注意
カプサイシンは胃腸への刺激が強いため、とりすぎると胃腸の粘膜を荒らしてしまい、下痢などを引き起こすことがあります。
また、舌への刺激も強いため、摂取量の多い状態を続けると、繊細な味付けを感じにくくなり、味覚に影響を及ぼすことがあります。
自らの体調と相談しながら、「美味しい」と感じる範囲の辛さで摂取することが大切です。
カプサイシンを多く含む食材
- トウガラシ
効果的なとりかた
カプサイシンは油に溶けやすい性質があるため、油と一緒にとることでカプサイシンを効率よく摂取できます。
赤やオレンジのトウガラシに含まれるカロテンも油に溶けやすいので、油を使った調理法と相性がとても良いのが特徴です。
生のトウガラシだとビタミンCも摂取できるため、旬の時期にはぜひ生を料理に活用してみてください。
鷹の爪をオリーブオイルにつけておくだけでも十分な辛味・風味が移ります。
そのオイルを使って野菜炒めを作ったり、ピザやトーストにかけるとピリッとした辛味がアクセントになって食欲が増し、同時にカプサイシンも摂取できます。
さらに手軽なものといえば「ラー油」が便利です。
ラー油を普段の料理にひとたらしするだけでも手軽にカプサイシンがとれ、味にも変化が出て食欲アップにもつながるのでおすすめです。
その他に気を付けたいポイント
これまでは栄養素を中心に解説してきましたが、今度は食事全体について気を付けたいポイントについて2点お伝えします。
脂肪・糖分・塩分をとりすぎない
熱中症対策のために意識して糖分・塩分を摂取したり、スポーツドリンクを飲んだりする人が多いかと思います。
確かに汗をかいた状態での糖分・塩分は摂取は必要ですが、体を動かしていないにも関わらず過度に摂取してしまうとむしろ逆効果です。
血液中の糖分・塩分・脂肪分の濃度が高いと、血液の流れは悪くなってしまい、血行不良の原因になります。
脂っこい食事や味の濃い食事、アイスクリームや甘い炭酸飲料のとりすぎには注意が必要です。
氷を使いすぎない
冷たい飲み物にさらに氷を足して飲んでいませんか?
冷え対策として「常温で飲む・温かくして飲む」というのはとても大切なことですが、そういうものが苦手な人も多いはず。
そこでおすすめなのが「氷を使いすぎない」ことです。
冷たい飲み物には氷を足さず、なるべくその状態で飲むように心がけましょう。
適度に冷たいと感じる状態で飲むことができるため、常温を飲むストレスもなく、体を冷やしすぎることも避けられます。
終わりに
今回は食事に関しての冷え対策について解説させていただきました。
夏バテによる食欲不振で食事量が減ると、どうしても体が冷えやすくなります。
その冷えによってさらに体調不良を招き、ますます食事量が減って冷え性に…。
そのような悪循環から抜け出すためにも、まずは食事内容を見直してみてください。
大切なのは「量」より「質」です。
また、体を動かせる人は適度な運動も合わせて行ってください。
体を動かす習慣のない人はどうしても血流が滞りやすくなります。
オフィスワークなどで、まとまって運動する時間の取れない人でも、休憩や作業の合間に少しストレッチを行ったり、動く作業を加えてみたりするだけでも血行は少しずつよくなります。
もし、運動が嫌いでなかなか続かない…、と悩んでいる人がいたらこちらの記事も参考にしてみてください。
夏の冷えを解消して、健康的に楽しく夏を乗り切りましょう。